ずっと昔から
知っている気がする
不思議な食堂のストーブ。

相模台にある商店街の枝道に、小さな食堂ができた。名前は「山ノ食堂」。丸い玄関灯に、ガラスの引き戸。木製のショーケースの中には、レトロな小物が並んでいる。最近できたのに、ずいぶん前からここにある気がする不思議な食堂。おいしいものが好きな増川さんと西本さんが、2人で店主を務めている。

「いつかお店がもてたら」。
夢みて購入したお弁当箱。

山ノ食堂の看板メニューは、3段重ねの丸い器にいろいろなお惣菜がつまった「ホーロー三段弁当」。お弁当のふたを開けるわくわくを、3回も楽しめるご馳走だ。ホーローのお弁当箱は、15年前に西本さんがタイで見つけた品物。お店を開くことに憧れていた彼女が、「もしもお店をもてることがあれば、使いたい」という思いで購入して、食器棚の奥に大切にしまっていたものだ。

たまたま出会った料理好きの2人。
長年の準備期間を経て、開店へ。

増川さんと西本さんが出会ったのは10年ほど前。共通の友だちを介して知り合った。「何となく気が合って、『いつかお店ができたらいいよね』なんて話してました」。硬い約束をしたわけではないけれど、それからずっと、2人の心の片隅には、お店を開く思いがあった。西本さんがブルーフレームヒーターを購入したのは、タイでお弁当箱を見つけたときと同じ頃。「自宅用に買ったんですけど、お店を開いたときにも使えるなぁって」。具体的な予定はなかったけど、西本さんはお店に置くことを想像しながらストーブを選んでいた。
それから時は経ち、2019年の早春。食堂のオープン1カ月前に、ストーブは内装工事をする2人と一緒に現場入りをした。寒さに耐えながら、塗装作業に奮闘する店主とその家族たち。「ストーブの暖かさには救われました。お腹が空いたら、天板にせいろを置いて肉まんを蒸したりしてね」。「あのときは寒かったねぇ。みんなで肉まんをハフハフしながらペンキ塗ったね」。壁を眺めると、当時の苦労を思い出して笑ってしまう。他にも、楽しい記憶を呼び起こすきっかけが、食堂のあちこちに散らばっている。

若い女性から、年を重ねた夫婦まで。
どんな人でもくつろげる場所。

山ノ食堂の客層は、とにかく多彩で幅広い。定年を迎えた夫婦、一人で来たサラリーマン、若いカップル、工事の作業員など。たくさんの老若男女が、ここに立ち寄ることを楽しみにしている。2人は、ブルーフレームヒーターへの印象を、「そこにあるだけでほっとする存在」「一緒に年を重ねたい存在」と語る。それは、山ノ食堂を訪れる人たちが、2人と食堂に対して思っていることと似ているかもしれない。

Q. あなたにとってのアラジンとは?

Answer:
EPISODE 21 | 山ノ食堂 さん

名物「ホーロー三段弁当」は、店内で味わえるメニュー。このほか、テイクアウトのお惣菜、季節の果物のシロップ漬け、ピクルスなども人気。「山ノ食堂」は、店主2人が山育ちなのでついた名前。「ノ」は三日月をイメージしている。

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